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本多の森の復讐鬼

——復讐に、声はない——

金沢 卯辰山

むかし、金沢の本多の森の深奥に、木々が鬱蒼と立ち並んで月明かりさえ地面に届かぬような場所があった。そのほとりに、一人の老いた男が妻とともに質素な小屋を構えて暮らしていた。小屋のすぐそばには、犀川へと続く澄み渡った小川が流れていた。

老人は物静かな性分で、ほとんど口を開かず、その一挙一動には不思議な静寂がにじんでおり、近隣の者たちはときに薄気味悪さを感じることもあった。誰も彼がどこから来たのかを知らなかった。能登の最果ての山々か、あるいはさらに遠い異国の地から旅してきた者だと、こそこそ囁く者もいた。

よいこのおとぎばなし

美女と野獣

 お姫様は美しかった。

 顔が良かった。スタイルが良かった。声が良かった。

 それだけだった。

 他に取り柄はなかった。

 男と遊ぶのが好きだった。一人に飽きたら次の男に移った。次に飽きたらその次に移った。飽きるのが早かった。城の中だけでは足りなくなった。城の外にも出た。村にも出た。隣国にも出た。

 神様が見ていた。

 しばらく見ていた。

 それからため息をついた。

「もうええわ」

 お姫様は能登もち雌豚になった。

 雌豚になって最初に思ったのは、においだった。

 能登もち雌豚のにおいがした。自分のにおいがした。

 次に思ったのは、腹が減ったということだった。

 次に思ったのは、明日食べられるかもしれないということだった。

 前の二つより、三つ目が一番怖かった。

 豚小屋から逃げた。

 野原を走った。森に入った。

 森の中で、キノコを見つけた。

 腹が減っていたので食べた。

悪くなかった。