プロデューサーとは何か? 作詞者・作曲者・スカウト係との違いと、AI時代の音楽制作における立ち位置の見極め

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音楽制作において「プロデューサー」と呼ばれる人間が、実際には何をしているのか。それを正確に把握している人は少ない。

現代のAI音楽制作ツール、たとえばSunoなどを使うことで、誰でも作詞・作曲・仮歌作成まで短時間で行えるようになった。だが、この効率化の波に乗りながらも、肝心な「プロデュース」の役割が置き去りにされているケースが多い。そこで今回は、プロデューサー、作詞者、作曲者、スカウト係の違いを明確にしつつ、優秀なプロデューサーに共通する視点と、セルフ判定の方法をまとめてみたい。


【作詞者と作曲者の役割】

作詞者は、物語を文字に落とし込み、リズムと発音に配慮して言葉を並べる人だ。
特にSunoのような音声AIに対応するには、「表記の簡略化(例:漢字をすべてひらがな・カタカナに)」「発音重視の言い換え」「セリフの使い方」など、AI仕様に沿った調整力が求められる。

作曲者は、音の流れや和音、メロディを設計する人。AIによって自動生成されるとはいえ、曲調に合うテンポや雰囲気、ジャンルの調整など、初期設定の判断力が必要だ。


【スカウト係の役割】

スカウト係は、外部から才能を見出し、活用する人。
この役割は、単に「歌える人」を探すだけではない。「歌わせてどう使うか」「宣伝素材としてどう利用するか」「相手とどのような条件で関係性を築くか」などの設計力が問われる。報酬を払わずに協力者を得るには、使い方・見せ方・仕組み作りが重要だ。


【プロデューサーの役割】

ではプロデューサーとは何か?

答えは単純だ。現場全体を見て、「この曲を成功させるために必要なすべての構成要素」を最適化し、実行する人間である。

・誰に歌わせるか
・どの歌詞を使うか(修正すべきか)
・曲調が合っているか
・何語で作るか、翻訳するか
・セリフは歌わせるのか話させるのか
・AIのバグをどう活用するか
・宣伝素材としてどの段階を切り出すか
・他人の目にはどう映るか

こういった点すべてに目を配り、実験と改善を繰り返すのがプロデューサーだ。


【ダメなプロデューサー vs できるプロデューサー】

ダメなプロデューサーは、「思い通りにAIが動かない」「歌詞をうまく歌ってくれない」「日本語が変だ」と文句ばかり言う。
つまり、AIを自分の理想に合わせようとし、現実の制約を研究しない人だ。

一方で、できるプロデューサーはAIのバグすらも武器にする

・セリフ部分が歌詞として固着するバグ → 新人発掘に利用
・同じ曲IDで歌い直せなくなった → 野良ペルソナで下調べ後、本命を起用
・言語によって曲調が変わる → ラテン語系で統一して曲調を維持
・主語の欠落が日本語の自然さを生む → 英語への翻訳時に補足でカバー

現場の歌い手が無理なことをAIができるように整える。現場を支える仕事をしているかどうかが、最大の分かれ目だ。


【あなたの立ち位置を判定する質問】

あなたは次のうち、どこまでやっているだろうか?

  1. 作詞・作曲はしている
  2. AIツールの使い方を研究している
  3. 他人の声を使って、宣伝素材を作ろうとしている
  4. 歌詞の表記や言語によるバグを理解している
  5. 「なぜAIがそう歌うのか?」の仕組みを研究している
  6. ダメだったとき、文句ではなく手法を変えて再挑戦している
  7. 歌詞レベル、セリフの強度、歌わせ方にランクをつけている
  8. 曲を「使う」目的で設計している(自己満足で終わらない)

4つ以上当てはまるなら、あなたはすでにプロデューサー思考を持っている。
6つ以上なら、実務レベルのプロデューサーだ。
全部当てはまっているなら、あなたはもう「AI音楽時代の指揮者」である。


【おわりに】

作詞・作曲・スカウト・プロデュース。これらはすべて異なるスキルだが、AI時代には一人で全部をこなす必要が出てきた。
しかし逆にいえば、誰でも「総合音楽プロデューサー」になれる時代でもある。重要なのは、文句を言う側にとどまらず、「調整する側」に立つことだ。

あなたは、現場の歌手か?
それとも、すべてを調整するプロデューサーか?

Sunoが学習をやめたからといって、あなたまで学習をやめてどうする。
現場のAIボーカルが暴れるなら、それを導くのがプロデューサーの仕事だ。

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