わたしは音楽制作をしているが、作詞・作曲については正直「中途半端」な立場だ。
SunoなどのAIツールを使えば、曲は量産できる。だが「トレンドを捉えた素敵な恋の歌」や「王道ロックの構成」あるいは「ローファイの空気感」など、狙ったジャンルに対して専門的な引き出しを持っているわけではない。
それでも音楽を作り続けているのは、「使い方」がわかるからだ。
つまり、作詞や作曲の素材をどう組み合わせれば、どう宣伝できて、どう効果が出るかという「プロデュース目線」があるからこそ、自分は制作を続けられている。
【作詞専門の人が持つ力】
たとえば、わたしの妻は作詞専門だ。彼女の作る歌詞には「どうでもいい」レベルから「取り扱い注意」のものまでランクが存在する。
一番上のレベル5になると、「1文字も変更するな」というほど強い設計思想がある。
こうした明確なランク分けと世界観の深さは、作詞を専門にしていない人間にはなかなか持てない。
流行の言葉を取り入れ、感情線に沿って自然な言葉を並べる力は、「素敵な恋の歌」や「トレンドソング」の原点となる。
【作曲専門の人が持つ力】
ローファイ、王道ロック、K-Pop風、アニソン調…。
どのジャンルにも「それらしさ」がある。コード進行、ビート感、楽器の使い方。これらを再現できるのが、作曲専門の人の強みだ。
特に今のAIは「ジャンルの表面」は真似できても、「ジャンルの文法」を理解していない。
作曲専門家はそこに対して、職人的な感覚で正解を出せる。
【アイディアはあるけれど、使い方がわからない人たち】
作詞者・作曲者には、しばしばこういう人がいる。
・アイディアは山ほどある
・世界観の設計も得意
・言葉も音も、豊富な表現が可能
でも――
・どうやってその曲を「使えばいいか」わからない
・どういう順番で発表すれば注目されるか見えない
・「これは売れる」「これは観客が反応する」感覚が薄い
こういう人たちは、「現場で戦える武器を持っているのに、地図がない」状態だ。
【逆に、わたしのような人間】
一方で、わたしには曲を作る技術はあるが、「専門性の鋭さ」はない。
流行ジャンルを網羅してるわけでもないし、強烈な歌詞を書く才能があるとも言えない。
けれど、地図はある。どう作れば使えるか、どう組み合わせれば効果が出るか、そこには明確な戦略がある。
だからこそ、自分には専門家との協業が必要だ。
特に、「プロデューサー+作詞家」「プロデューサー+作曲家」という組み合わせがあるだけで、今まで不可能だった音楽の設計が可能になる。
【非難を浴びないための自己認識】
時に、プロデューサーやAIユーザーは「なんでもできる」と思われがちだ。
だがわたしは、自分の弱点もはっきり認識している。
・歌えない
・作詞は妻の方が上
・作曲もプロには敵わない
それでも、「何が必要で、どう動けばいいか」を言語化し、構造として捉えることができる。
これはプロデュースの基本であり、専門家を活かすための出発点だ。
【おわりに】
作詞・作曲専門の人に伝えたい。
あなたの持っているそのアイディアは、戦い方さえわかれば必ず使える武器になる。
そして、わたしのような「全部中途半端な人間」は、あなたの武器を使いこなす術を持っているかもしれない。
誰か一人で完璧である必要はない。
今は、AIが伴奏し、人間が役割を見極めれば、それで音楽は成立する。
だから、あなたの力を探している。
作詞のプロ、作曲のプロ、曲の言葉を生きた物語に変えられる人たちと、一緒に作品を作っていきたい。

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